理想的な治癒とは?
ホメオパシーで私たちが目指す理想的な治癒は、創始者のハーネマンが言う、
「素早くて優しく、永続する健康の再構築」
( rapid, gentle and permanent restoration of health )
です。ホメオパシーによって健康が再構築されると、これまでとは違う次元にいるような調子の良さを感じることがしばしばあります。今まで慣れていた状態とあまりに違うので、調子はいいのに何か不安定に感じられる場合もあります。そんな場合でも徐々に慣れてそれが当たり前になって行きます。
ただ、レメディに対する反応は、選択されたレメディや患者の体質、生命力の強さ、その時の状況などによって大きく異なるので、みんなが1つのレメディだけで夢のようによくなるわけではありません。
レメディに対する反応パターン
レメディに対する反応には様々なパターンがありますが、例えば次のようなものがあります。
①症状が素早く改善して良い状態が続く場合(理想的な反応)
②症状が一時的に悪化(好転反応)したあとに素早く改善して良い状態が続く場合
③一時的な悪化が比較的長く続いたあとにゆっくり改善して良い状態が続く場合
④一時的に症状が改善した後に一時的に悪化する場合(普通の薬に近い反応)
⑤精神症状・全身症状は改善するが、局所症状が悪化する場合
⑥局所症状は改善するが、精神症状・全身症状が悪化する場合・・・
もちろんその他にも色々なパターンがありますが、このレメディに対する反応に基づいて治療効果と予後の判定が行われます。
体質にもよりますが、これまでに医薬品などで症状を強く抑えてきた人ほど、一時的な悪化(好転反応)が強めに出る場合があります。
実際の臨床ではどのような経過をたどるのか?
生命力(自己治癒力)が強い場合
一般に生命力(自己治癒力)が強いほど、レメディに対する反応は良く、治癒が得られる可能性は高くなります。若くて元気な人は良く治ります。
1種類のレメディを取っただけで、症状が劇的に改善するのを目の当たりにすると、「治るというのはそういうことか!」と本当に感動します。しばしば症例報告として報告されるのも、そのような症例が多いです。
患者さんの生命力が強いと、刺激に対してしっかり反応できるので、明確な症状が出現します。
そのような場合は似たレメディを正確に見つけやすくなります。
1種類のレメディを数回投与しただけですっかりよくなることもよくあります。
※図では、健康な状態を丸い円として、生命力の強さを円の大きさで表しています。
みんないろんな傷を持って生きていますが、それをデコボコで表現しています。
生命力(自己治癒力)が弱い場合
一方、生命力が弱くなるほど、レメディに対する反応は低下します。ご高齢だったり、病気がちな人は治療経過が長くなる傾向にあります。
経過の長い慢性病で複数の病態が複雑に絡み合っているような症例では、症状が改善するには複数のレメディが必要となるケースが多くなってきます。そのような場合、症状が改善するまでに1年以上必要とすることもよくあります。
患者さんの生命力が弱くなると、刺激に対する反応が弱くなるので明確な症状を出せなくなってきます。ただ疲れやすいなど、特徴のないありふれた症状が中心になってきます。
症状が明確でないと、正確にレメディを選ぶのが難しくなりますが、
そんな時もその時の全体像に最も近いレメディを選びます(レメディ1)。
レメディの刺激によって、生命力も少し回復します。
その後も同様に、その時の全体像に対して処方するのが原則です。(レメディ2,3)。
特に経過が長く、患者さんの生命力(自己治癒力)がかなり弱くなっている場合は、弱めの刺激を頻回に繰り返すことによってまずは生命力を養います。
生命力が養われてくると、患者さんは特徴的な症状を明確に出現させることができるようになるので、より適切なレメディを選べる可能性が高くなります。また、より強い刺激にも耐えられるようになってきます。
癌の終末期など、生命力が極めて弱くなった状態では残念ながら治癒は望めません。その場合でもその時のつらい症状に対して適切なレメディを処方することで、症状の緩和は得られます。