貝ヶ森皮膚科

寒熱真仮の鑑別に関する症例

患者さんは40歳過ぎの男性です。

高血圧になって、もうすぐ5年になります。血圧は190/100で、西洋薬を飲んでも効果がなく、ここ半年くらいは胸がどきどきするようになり、胸のレントゲン写真では心臓肥大を指摘されています。

 

ちょっと見た感じでは比較的健康に見えて、顔色は赤くてつやがあり、額にはうっすらと汗をかいています。しかし、夏なのに長袖と長ズボンの出で立ちです。彼にその理由を聞くと、

 「下半身がすごく冷えて、体には汗をかきません。」

といいます。

脈をよく診ると、寸関部は弦脈で、両手の尺脈は比較的虚弱でした。

舌を診ると、舌質はやや紅く、舌は大きく、舌苔にははっきりした変化はありませんでした。

 「あなたはどこが調子が悪いのですか?」

 「いつも頭痛とめまいがして、少し速く歩くと胸がムカムカして、時々心臓がどきどきすることもあります。のどが渇いて水を飲みたくなるんですが、小便が多くて毎晩3回トイレに起きます。眠りが浅くてよく目が覚めます。腰に少し酸痛があります。」

 

冷えが下にあって、陽気が上におされて浮き上がり、虚陽浮越という状態です。

 

私はペンをとって処方を書き始めました。

熟地黄、山茱萸、牛膝、枸杞、白芍薬、石決明・・まで書いたあたりで、患者さんが、頭を左右に振り始めたのでその理由を聞きました。なんでも、これらの薬は何度も飲んだが効かなかったというのです。私は、

 「あわてないでください。まだ2つの引経薬があります。恐らくまだ使ったことがないものです。」

 「何の薬ですか?」

 「附子10g, それから肉桂を口の中に含む必要があります。」

私がそう言うと、彼はすぐに手を振って言いました。

 「私は血圧がこんなに高いし、頭が熱いのに、その上附子と肉桂を飲んだら火に油を注ぐようなものではないですか!」

私は笑って彼に言いました。

 「私が附子と肉桂が大熱の薬だと知らないとでも思っているんですか? 闇雲にこれをあなたにあえて使ってみようしているとでもいうのですか。バカを言ってはいけません。あなたは今、命門の火が衰えていて、虚陽が上に浮いている状態で、下半身が本当に冷えていて、上半身は仮に熱いだけなのです。もし本当に体に熱があるのなら、どうして下半身が冷えて今も靴下をはいて、透明な小便がたくさん出るのですか? 中医学ではこれを「龍火飛騰」といって、まさに「引火帰源」すべきで、附子と肉桂は鍵になる薬なので使わないわけにはいきません。もし信じられないのなら試しに少しだけ飲んでみてください。」

 

5日間薬をのんで、患者が来て言うには、

 「めまいは前より少しよくなりましたが、うまく行っていないようです。」

 「今日の血圧は測ってみましたか? 」

 「測っています。152/94でした。」

私は笑って言いました。

 「これは良いことですか良くないことですか? 慌てないで飲み続けてください。」

 

また5日間飲むと、めまいと頭痛はすっかりなくなり、血圧もほとんど正常に近づきました。

 

 

 

 

 

 

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