貝ヶ森皮膚科

北京からの電話

北京からの電話でした。

 子供たちが年老いた父親を北京に連れて行き、あちこち病院を回っていくつも検査をしたあげく、結論は大した問題ではないというものでした。

 元来健康な老人でしたが、ここ数ヶ月突然体力が落ちて、速く歩くと必ず息切れするようになりました。子供たちは心配して、父親が健康で長生きできるように、たくさんのお金を使いましたが、いったい何の病気が見つかったというのでしょうか。仕方がないので、中医学の専門家を探して薬を処方してもらいました。それでも心が落ち着かないので電話で筆者に意見を求め、その薬を飲んで良いかどうか尋ねてきました。

その処方は以下のようなものでした。

生地黄 10g, 麦門冬 10g, 当帰 10g, 苦参10g, 枸杞子 10g, 珍珠母 20g, 牡蠣 20g, 浮小麦 30g, 太子参 20g, 山薬 20g, 茯苓 10g, 炙甘草 10g, 白朮 10g, 合歓皮 10g, 桑寄生20g, 大棗 3個

 

電話で筆者は自分の考えを次のように伝えました。

 

1. お父さんの問題は小さいものではないこと

 コンピューターの故障にはハードウェアの故障とソフトウェアの故障があって、ソフトウェアの故障のほうがずっと頻度が高いものです。人でも同じです。西洋医学の検査で異常がないことはハードウェアに異常が見つからないことに相当します。検査に異常がなくてもお父さんに異常がないことにはなりません。

 

2. お父さんの主な問題点は陽気が虚衰していること

 一分の陽気が留まれば、一分の生命が留まります。それがお父さんの状態に当てはまります。この種の陽気の虚衰は必ずしも陽気が突然亡くなるものではなく、わかりにくい亡陽の典型的な表現ですが、同じく死に至りうるものです。

 

3. この処方は中西医結合の産物であること

 このような処方は病気が軽ければ良いかもしれませんが、重篤な場合には逆効果です。生地黄、麦門冬、当帰、枸杞子、太子参、山薬の滋陰するもの、珍珠母、牡蠣の潜鎮、苦参の苦寒はさらに陽気を損ないます。また、方剤の中の黄耆、太子参も効果は期待できません。というのは、お父さんの気虚の原因は元気の衰耗であり、肺気、脾気の虚耗ではなく、補気薬の中で元気を補う作用があるのは人参だけだからです。

 

4. 問題を解決するには純粋な中医師を探す必要があること

 患者さんを診察してはいませんが、電話のお話から察するに、お父さんの症状は少陰病かもしれず、経方が最も適するかもしれません。中西医結合方法は合わないかもしれません。

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